けんちゃんくんさんのWeb日記
2015/10/2

ドキュメント トヨタの製品開発を読みました。

夏休み(もう2ヶ月近くたっている…)の課題図書であった ドキュメント トヨタの製品開発: トヨタ主査制度の戦略,開発,制覇の記録 の読書感想文です。

あとがきにある通り、自動車開発の課程と、その中における主査という役割について驚くほど詳細に書かれており、プロダクトマネジメント、プロダクトマネージャについて考える上でとても参考になりました。

本書は、製品開発の実像を正しく理解してもらうために、また研究・教育の参考資料とするために、自動車の製品開発を全体像から活動細部に至るまで詳述したものである。

一方で、詳細に踏み込んでいるが故に、自動車の仕組みや業界を知らないと置いていかれてしまう部分もそれなりにあるので、そういった部分を流しながらトヨタの主査の仕事に着目して読むとよいのではないかと思いました。

主査の責任と守備範囲の広さ

序章に「担当車種に関しては、主査が社長であり、社長は主査の助っ人である」という一文があるように、主査の守備範囲はあまりにも広い。

私がエンジニアであるために、エピソードの中での主査の技術的な知識や能力の高さに驚くばかりでしたが、おそらくマーケティングや企画の人が読むと、そういった面での主査の能力の高さというものに気付くのではないかと思います。

当然それだけ広い範囲をただ一人ではカバーできないので、「主査付き」と呼ばれる「主査と同一人格」と見なされるメンバーとチームを組むという話で、この「同一人格」というのがとても力強く感じました。

また、主査付き以外の人には一切の人事権を持たず、説得でのみ人を動かさなければならないという点においても、技術やマーケティング、企画の能力だけではなく、思考力やヒューマンスキルなど、本当に幅広い能力を高いレベルで求められています。

エンジニア目線で熱いと感じたポイント

実際の設計問題は、力学系、環境条件、深が複雑すぎて、簡単な仮定のもとに成り立つ工学理論では解決できないが、工学理論の根底にある論理に頼れば、勘に頼るより、トラブルの少ない解決策を得やすい

現実社会は厳しいんですが、でもそのよりどころは根底にある理論なことが多いですよね。

設計者はまず性能・品質目標を、その後に原価目標と重量目標の達成を目指す習性があるが、それでは背反する三つの目標の同時達成はますます難しくなる。初めから三つの目標達成を同時進行させる以外方法はない。

これは本当に難しいですよね。複数の相反する(と感じる)目標があるときに、どれか一つを達成させるところから初めてしまうと、その時点で視野を狭めてしまうが可能性があると感じているのですが、似たような話なのかなと思います。

発売直後の品質問題は早期発見し早期対策しないと、新商品に回復不可能な致命傷を与えかねない。

Inspiredでも言われていたことなので心に刻みます。

新商品がヒットしなければ製品開発は成功とは言えない。

はい!がんばります!

勝ち続ける製品開発グループは多くの協力者を得てますます勝ちやすくなり、負けた製品開発グループは多くの協力者を失い再び勝つことが難しくなる。

ここまでストイックな場合は少ないとは思いますが、一度勝つと次も勝てる可能性が高いというのは、資金面も、メンバーの自信という面でもそういう側面があるだろうなとは感じますよね。

顧客は、造ることにかけては素人でも、買うことにかけてはプロなのだ。

この本のなかで一番ささった一文な気がします。顧客もプロなのです。

商品が顧客ニーズに合っている、合っていることを顧客が理解している、お買い得感がある、ことも必要不可欠である。

「ニーズに合っていることを顧客が理解している」というのはハッとさせられました。顧客が「理解」できるような仕組み作りが必要なんですね。

セールスが気づく前に発見し、顧客が気づく前に対策を終えたい。

こういうペースで問題を解決していきたい!

おわりに

近年のIT業界におけるプロダクトマネジメント機運の高まりの根底には、トヨタ生産方式とその主査制度があるのは間違いないでしょう。その中でも主査という役割の具体的な実例が書かれている数少ない書籍ですので、そういった分野に興味がある人は自分の立場や役割と比較しながら読むと沢山の学びがあるのではないでしょうか。

created_at: 2015-10-02 05:08:57 +0900
updated_at: 2015-10-28 09:12:34 +0900